読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

ペンギンの飛び方

本を読んだりニュースを見たりして考えたことを、自由に書いていきたいと思います。

フェイクニュースサイトの2類型

ネット

 

www.buzzfeed.com

 

このbuzzfeedさんの記事を見て、少し前から考えていたことを書こうと思います。それは、フェイクニュース(サイト)の形態についてです。2つあります。

 

「breitbart」型

まず、buzzfeedさんの記事で取り上げられているようなフェイクニュースを、去年の米大統領選でも大きな影響力を持ったと言われる、嘘や陰謀論に満ちた記事を掲載するニュースサイト「breitbart」にちなんで、「breitbart」型としておきたいと思います。

「breitbart」型のフェイクニュースサイトの特徴は、記事の執筆者自身が、人々の耳目を集め、特定の集団や人物に憎悪を仕向けるような虚偽の情報をでっち上げ、それを記事、つまりニュースとして発信する点です。

この形態のフェイクニュースにおいては、「記事の内容」そのものがサイトの肝であり、それに注目が集まり外部に拡散されてゆくことで「フェイク」が「ファクト」になり、憎悪は増幅されていきます。

 こうしたサイトに人々がおもむくのは、記事に書かれた「ニュース」を見たいからであり、これがSNSなどを使って拡散されることで、サイトに積極的には訪れない多くの人の目にも触れ、結果、サイトは世論を変える力を持ちます。

 

まとめサイト」型

もう一つの形態はまとめサイト」型です。(僕はこの型が日本のフェイクニュースの主流だと考えています。)

このまとめサイト型のフェイクニュースの特徴は、記事の執筆者が、記事そのものを書いていないというところにあります。

この形態のフェイクニュースサイトでは、どこか別のニュースサイトの記事(これには上記の「breitbart」型のフェイクニュースサイトも含まれる)や新聞記事、あるいは個人のツイッターやブログ等への、「カキコミ」=「無数の匿名の人々の反応」を集めたものがサイト内のニュース、つまり「記事」となります。

 したがってこの「記事」の執筆者はこの「反応」をまとめてタイトルをつけているだけで、記事そのものを書いているわけではありません。

そしてこのようなサイトの肝は、冒頭に掲載される元々の別のニュースサイト記事にではなく、それに対する「匿名の人々の反応」にあるのであり、それを見ることが人々がサイトを訪れる理由となっています。

 

「反応」について

まとめサイト」型で考えなければならないのが、この「反応」というものです。

僕の考えでは、これらの記事内の「反応」は、ある面において「breitbart」型のフェイクニュースサイトにおいてSNSが担う役割と似たような役割を持っています。

「breitbart」型において虚偽の情報による記事が真実となるには、それが多くの人々に拡散されることが重要で、それにはSNSの力が欠かせませんでした。

この場合SNSは、情報を多くの人々の目に触れさせるだけではなく、自分以外の人も知っている、共有しているのだという「雰囲気」を作り出す役割を担っています。

嘘が真実になるためには、多くの人がその情報を目にすることも勿論重要ですが、自分以外の人間が共有している(信じている)ように見えることも同じくらい重要です。

SNSはこの点、シェアボタンやニュースに対するコメント欄のようなもの(記事に対するコメントをまとめて見れる機能)の存在によってこの2つの課題をクリアしているわけです。

まとめサイト」型では、「反応」がこの後者の役割を担います。つまり、「嘘→SNS→共有→真実」という過程を、元々の記事とそれに対する「反応」をパッケージ化することで、サイト内で完結させているのです。

したがってここでは、「反応」が作り出すサイト内の「空気」がフェイクをファクトに変えています。

もちろんこれだけではSNSの「多くの人の目に触れさせる」という機能は持ちえませんが、少なくともサイトを見た人にとっては、無数の匿名の人々が反応を寄せるその記事は、信頼性の高いもののように映るでしょう。

 これまでの記述は、主に元々の記事が嘘だった場合に注目したものですが、これがしっかりとしたニュースサイト、例えば新聞社のデジタル記事の場合はどうでしょうか。

実際のところこの場合も、事態はあまり変わらないように思えます。なぜなら、この「反応」それ自体にも、嘘が大量に含まれているからです*1

したがって根っこの記事が普通のものでも、そこに嘘や偏見に満ちた「反応」が集まることで、結局フェイクは作られ、そしてその場ですぐにファクトになり、憎悪は増幅してしまうわけです*2

 

まとめサイト」型の効用

これまで「反応」がもたらす「まとめサイト」の特徴を述べてきたわけですが、そもそもこの特徴は、「反応」がある 一定方向に切り取られなければ成立するものではありません。

そう考えるともしかするとまとめサイトは、この点にもっとも大きな特徴があるのかもしれません。

これらのサイトの多くは、各々のサイト独自に、無数の匿名の「反応」を一定方向に切り取っています。中には、サイト名からその方向性が分かるようなものもあります。

こうしたサイトは、サイトで取り上げられた元々の記事に対しての、自分とは異なる感想を見るかもしれないリスクや、それによる心理的ストレスを取り除いてくれます。

 嘘が真実となるため、あるいは自分の考え(感想)が正しいのだと確信するためには、他人との情報(感想)の共有(感)が必要ですが、それを確認するためのニュースのコメント欄やSNSはこのようなリスクをはらむため、ここでジレンマが生じるわけです*3

まとめサイトはこのリスク、不安を一掃し、ジレンマを解消してくれます。サイト内の出来合いの「世論」が嘘を真実にする過程を一通り行い、自分の正しさを証明してくれるからです。

 信じたいもの(嘘の情報)を提示する場が「breitbart」型のフェイクニュースサイトだとすれば、「まとめサイト」型のそれは、信じたいものを心置きなく信じるために、より快適な環境に改良されたニュースサイトだと言えるのかもしれません。

 

*1:「反応」と言うと「感想」だけのようにも聞こえますが、もちろんそれだけではありません。

*2:この場合嘘の出所が分からないという点でも厄介です

*3:SNSはコメント欄よりも「安全」ですがまだノーリスクとはいえないように思います