ペンギンの飛び方

本を読んだりニュースを見たりして考えたことを、自由に書いていきたいと思います。

短絡的な思考をしないための社会心理学用語

 

 

1.外集団同質性バイアス(外集団均質性効果) 

これは自分が所属していない集団(外集団)に対して、自分が所属する内集団よりもステレオタイプ化された単純かつ均質な認識をしてしまう現象です。

たとえば「XX県民は冷たい」だとか「YY国民は気難しい」などですが、容姿などの外見的な特徴に対する認識の中にもこの現象が見られる場合があります。

 

2.錯誤相関

これは多数派に対して相対的に少数である集団の行動が、その集団の成員が皆そのような行動をとると認識されてしまう現象です。

たとえばメンバーが10人の集団Aに属する内2人が望ましくない行動をとり、5人の集団Bの内1人が同じように望ましくない行動をとったとします。

数字の上ではどちらも全体のうちの望ましくない行動の割合は5:1ですが、多くの場合集団Bの方が望ましくない行動をとりやすいと認識されてしまいます。

なお錯誤相関の厄介なところは、褒められるべき望ましい行動に関してはその効果が働かない点です。

例として国内の少数者の犯罪に対する認識に、この現象が見られます。 

 

 

3.内集団びいき

これは読んで字のごとく、自分が所属する内集団を、所属しない外集団よりも高く評価したり、特別であると感じたりする現象です。 

また、そのために外集団を貶めてしまうこともあります。

この現象の面白いところは、まったく無意味に分けられた集団であっても、その効果が見られる点です。

集団を自分の属する内と外に分けるのは人間の性でもあるので、この現象を防ぐことは難しく、時には非常に強い偏見や差別を生んでしまうことがあります。

 

4.選択的認知

これは人間が一度持った認識の枠組みや信念そって、その後の情報収集をしてしまい、その認識を強化するような情報しか集めず、それを覆すような情報にあたってもそれをスルーしてしまう現象です。

この現象が発現すると偏見や差別をそのまま放置するばかりか、強化してしまう場合もあります。

 

5.サブタイプ化

これは上記の選択的認知と若干かぶる点がありますが、同じように一度認識の枠組みや信念が作られ、その後その認識を覆すような情報に出会ったとき、それをサブタイプ、つまり例外であると処理し、持っていた信念の変化を防ぐ現象です。

これは2.錯誤相関にも関わっており、少数集団の望ましい善い行動に対して錯誤相関が働かないのはこのサブタイプ化が影響していると思われます。

 

6.集団極性化現象-リスキーシフトー

 これは個人の意思決定よりも、集団での討議した後の決定のほうが意思決定がより危険な方向へとシフトしてしまう現象です。

この場合、集団は意思の統一を目指す傾向が強く成員は個人的な疑問を抑えます。そして、自集団の道徳性や将来を過度に信頼しつつ、他集団への蔑視を始めます。

原因として、同じ意見を持つ人が集まるような場所、また集まってできた集団では、それに反対する人が少なく、その集団内で自分がより進んだ価値観を持っているとか、より高い地位への欲求から、互いが当初の傾向よりも強調された意見を出し合うことで、よりリスキーな方向へ極性化してしまうと考えられています。

これは企業や国家中枢などあらゆる集団に見られる現象です。

 

7.集団極性化現象-コーシャスシフト-

これは上記のリスキーシフトとは反対の現象で、集団の成員が最初の個人の意思傾向として用心深い方向であれば、極性化によってより集団の決定が用心深い方向へと変化する現象です。

原因はリスキーシフトと変わりなく、互いが当初の傾向を強調した結果生じる現象です。

 

 

追記 この記事を開いた方なら、同じく(社会)心理学的な要素を含んだこちらの記事も面白く感じるかもしれません。

 

human921.hatenablog.com

 

 

 

 参考文献 

上瀬由美子著「ステレオタイプの社会心理学-偏見の解消に向けて」サイエンス社 2002年

山岸俊夫著 「社会心理学キーワード」有斐閣双書 2001年