ペンギンの飛び方

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新・映像の世紀 第1集 感想

こんにちはhuman921です。

ついに待ちに待った「新・映像の世紀」が始まりましたね。

皆さんはどのような感想を持たれたでしょうか?

 

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私は20年前の前作、「映像の世紀」の放送をリアルタイムでは見ていないのですが、何度か繰り返された再放送や、9月ごろに放映されたデジタルリマスター版などを何度か見てきました。

 

この記事では25日に放映された「新・映像の世紀 第1集 第1次世界大戦-100年の悲劇はここから始まった」と、それに対応するであろう「映像の世紀 第2集 大量殺戮の完成-塹壕の兵士たちは凄まじい兵器の出現を見た」を比較して気づいたことを書いていきたいと思います。

テーマの違い

番組紹介で「今回のテーマは人間」と繰り返していたように、今作は特定の人物のエピソードに時間が割かれていました。ハーバー博士やその妻のクララ、ロレンスなどです。一方で、大戦の戦局の変遷もしっかり追っていました。しかしそのせいで、個人のエピソードの掘り下げが浅くなり、内容を詰め込みすぎているという印象を私は受けました。それはナレーションの多さにも現れていました。

本来、ハーバー博士もロレンスもそれぞれドキュメンタリーを作ろうと思ったら、NHKスペシャル1回分の時間が必要な人物です。それを第一次世界大戦という巨大な歴史を追いながら紹介するするのは少し無理があったように思いました。

一方で実は20年前の「大量殺戮の完成」にも、手記や手紙という形でハーバー博士もロレンスも出てきてはいるのです。しかしそれはあくまでも味付け程度で、深く立ち入ることはせず、番組の焦点は常に時代の渦に翻弄される名も無き兵士たちや民衆にありました。

個人のエピソードを紹介するというのは今回のテーマにもあったように新しい試みであったのでしょう。しかしその掘り下げが浅いと「ふーん、そんな人がいたんだ」程度で終わってしまう危険性があります。その点、「大量殺戮の完成」は焦点を「特定の誰かではない」人類全体に当てていた点に、視聴者のハートをつかむ魅力があったように思います。

副題の違い

この2作は副題の違いが番組の内容にも表れていました。勝手に比較したのはお前だろと言う声が聞こえてきそうですが、この点は番組構成において重要な点を占めていたように思います。

今作は「100年の悲劇はここから始まった」と副題にあるように、過去と今がつながっていることを強く意識させる内容になっていました。それは上の個人エピソードの人選にも表れていて、ハーバー博士であれば化学兵器の開発と後の原爆やチクロンBなど、科学(化学)技術の戦争協力、ロレンスであれ現在も続く中東紛争、というような感じです。

過去と現在をつないで考えるというのは歴史を学ぶ上で非常に重要なことですが、今作に関してはそれが裏目に出ているのかなと個人的には思いました。なぜなら、そのために映像が時系列に紹介されず、時代が過去から未来、そしてまた過去へといったり来たりして、第一次世界大戦という壮大なテーマに没頭することができなかったからです。(特にウェルズの著書で彼は広島長崎も予言していたとのナレーションは残念でした)

中東紛争やアウシュビッツのガス室の映像を流すのは後の集でもよかったのかなと私は思います。(ここに全6集という短さの弊害が出てるのでしょうか?)

ナレーション・演出の違い

これは上記のテーマの違いでも触れていることですが全体を通してナレーションが多すぎる、また説明しすぎていると感じました。「映像」の世紀なのだからもっと映像の力に頼ってもよかったように思いました。詳しく比較したわけではないですが、「大量殺戮の完成」ではもっと映像だけに集中させる時間があったように思います。

前作で好評だった当時の人々の手記などの紹介にも違いがありました。前作の手記の紹介は要所要所で映像とともに「字幕なしで」流れることで、映像への集中を妨げずに、映像に意味を与え、命を吹き込んでいました。さらに重要な場面でナレーションの代わりとなるような働きも持っていました。(レーニン時代のソ連の実態やロレンスの裏切りによる中東での混乱は、ナレーションではなく当時の人々の言葉(ソ連であれば強制労働者の手記紹介など)でもっと説明できたのではないでしょうか?)

しかし今作はナレーションのお膳立てや説明から手記などの紹介がされることが多く、数秒の無音(ナレーションが無い)状態からすっと紹介が始まることの多かった前作とは大きく異なり、手記が連続でまとめて紹介されることもありました。これにより、時代と映像と当時の人々の言葉が一緒になって視聴者の心に焼きつくというようなことはなくなってしまったように感じました。

まとめ

なんか書いている内に批判ばかりになってしまいましたがやはりドキュメンタリーとしてはとても面白いので最後まで見続けたいと思います。