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ペンギンの飛び方

本を読んだりニュースを見たりして考えたことを、自由に書いていきたいと思います。

「Post-Truth」時代の情報との向き合い方(インターネット版)

ネット

 

オックスフォード大出版局が選出した今年の英単語が「Post-Truth」だったということで、日本でもにわかにこの単語が注目を集めています。

さて、この「Post-Truth」ですが、この言葉の意味する「客観的な事実や真実が重視されず、真実のように感じられることがそのまま真実となる時代」は、インターネットやそれによるSNSの普及がその興隆に一役買っていると、ここ最近頻繁に指摘されるようになってきています。

 

www.buzzfeed.com

 

というわけで今回は、自らへの覚書という意味でも、インターネットで情報を収集する際の心得のようなものを、かなり簡単にではありますが主に社会(認知)心理学用語を交えながらここで一度まとめておきたいと思います。

なお、分かりやすくするため3段階に分けて説明します。

 

 

1.情報を集める段階

この段階で(というよりおそらく全段階を通して)最も注意しなければならないのは、「確証バイアス」(「選択的認知」でもいい)です。

 

確証バイアスとは・・・

一度持った認識の枠組みや信念にそって、その後の情報収集を進めることで、その認識を強化するような情報のみを集め、それを覆すような情報をスルーしてしまうこと。

 

クリックという動作の介在やSNSの特徴的なシステムによって、自らが見たい情報だけを見るという行為は以前よりも容易になっているように思えます。

情報を見る以前のこのバイアスに自覚的になることが、インターネットを使った情報収集にはまず欠かせません。

 

 

2.情報を見る段階

この段階では、まず情報の出所を探りそれが信頼できるものなのかを見極めることが、他のなによりも優先されなければなりません。問題は、この先です。

先ほどの確証バイアスと関連して、「サブタイプ化」に注意する必要があります。

 

サブタイプ化とは・・・

一度作られた認識の枠組みや信念を覆すような情報に出会ったとき、それをサブタイプ、つまり例外であると処理し、持っていた信念の変化を防ぐこと。

 

また、特に犯罪報道など、ネガティブな要素のある事柄を伝えるニュースに触れる場合は、「錯誤相関」に特に気をつけなければなりません。

 

錯誤相関とは・・・

多数派に対して相対的に少数である集団のネガティブな行動が、その集団の成員であることと関連付けて認知されること。

たとえば人数が10人の集団Aに属するメンバーの内、2人が望ましくない行動をとり、5人の集団Bの内1人が同じように望ましくない行動をとったとする。

数字の上ではどちらも全体のうちの望ましくない行動をするメンバーの割合は5:1だが、錯誤相関が働くと集団Bの方が望ましくない行動をとりやすいと認識される。

 

 

3.情報を見終わった段階

ここに潜む危険性は、僕が見る限りこれまでの段階の危険性よりも、あまり問題視されていないというか、見過ごされがちです。しかし、大量の情報を息つく間もなく次々とはしごする現代人にとって実はこの情報に触れた後の段階が、非常に重要なのではないかと思います。というわけで、この項は少し長く書きます。

僕が考えるに、このタイミングでもっとも注意するべきは「スリーパー効果」です。なぜならこれは、これまでの段階で触れた認知上のバイアスにいくら注意を払っていたとしても、避けることが難しい現象だからです。

 

スリーパー効果とは・・・

時間の経過によって情報の送り手が誰かという記憶が減退することで、情報の信頼性の問題が希薄化し、信頼性の低い情報の内容に説得力を感じるようになること。

 

 この現象は、信頼性の高い情報も低い情報もごった返し同じ土俵に乗ってしまうインターネットにおいては、特に注意する必要があります。

なぜならこの効果が働くと、いくら情報の信頼性を気にかけていたとしても、信頼性の低い情報が目に入ったことそれ自体によって、後々の自身の態度が変容してしまうからです。

これに関連して「マイノリティ・インフルエンス(少数派影響)」にも気をつけなければなりません。

 

マイノリティ・インフルエンスとは・・・

 少数者が一貫して同じ主張を続けることで、多数者の意見を変容させること。

 

インターネットでは、その広大さから社会生活において普段見られない主張や常識とは異なる意見が目に入ることがありますが、大体においてその主張者は一貫しており、また、インターネットはそのような人々を特定の場所に集める作用があるので(少数者にとっては自分と同じ主張をする人を見つけるのにインターネットは優れたツールである)、何か特定の、少数ではあるけれども数としては無視できない規模の集団が、そのような意見を主張しているように見えてしまいます。

それによって、たとえ彼らの主張する情報の信頼性が低くとも、言ってしまえば嘘でも、マイノリティの凝集と可視化によって特に「その話題に興味の無い人々」は影響されてしまう可能性が生じてくるのです。

 

SNSの発達、それらの持つ特徴的なシステムによって、自身と同じ意見や価値観を持った者同士が集まり、彼らの発した主張を見、共感を伝えることは以前よりも容易になりました。

このような状況では、集団極性化現象」その中でも特に「リスキーシフト」に注意を払う必要があります。

 

リスキーシフトとは・・・

個人の意思決定よりも、集団での討議した後の決定のほうが意思決定がより危険な方向へとシフトしてしまう現象。

この現象が作用すると、集団は意思の統一を目指す傾向が強く成員は個人的な疑問を抑え、自集団の道徳性や将来を過度に信頼しつつ、他集団への蔑視を始める。

 

例えばニュースへコメントをする場合、同じ価値観を持った人々が集まれば当然、そのメンバー内で意見は同じようなものになります。これによって人は自分の考えの正しさを再確認するわけですが、ここでは特に集団におけるリスキーシフトの危険性に自覚的である必要性があるでしょう。

 

その他

ここでは補足として確証バイアスにおける「認識の枠組みや信念」つまり、「信じたい情報」が何に由来しているのかに自覚的になるための用語を紹介しておきます。

 

内集団びいき

自分が所属する集団、つまり内集団を、所属しない外集団よりも高く評価したり、特別であると感じたりすること。 

そのために外集団を貶めてしまうこともある。

 

外集団同質性バイアス(外集団均質性効果) 

自分が所属していない集団(外集団)に対して、自分が所属する内集団よりもステレオタイプ化された単純かつ均質な認識をしてしまうこと。

たとえば「XX県民は冷たい」だとか「YY国民は気難しい」などだが、容姿などの外見的な特徴に対する認識の中にもこの現象が見られる場合がある。

 

 

参考文献

上瀬由美子著「ステレオタイプの社会心理学-偏見の解消に向けて」サイエンス社 2002年

山岸俊夫著 「社会心理学キーワード」有斐閣双書 2001年

斉藤勇編著 「図説社会心理学入門」誠信書房 2011年