ペンギンの飛び方

本を読んだりニュースを見たりして考えたことを、自由に書いていきたいと思います。

公文書改ざんと民主主義の危機

私は最近、長い間読みたいとは思いつつ敬遠していたK.R.ポパーの『開かれた社会とその敵』をついに読んだ。間違いなく、私がここ数年手にした本の中で、最も衝撃を受けたものの一つであった。 今回は当該本で繰り広げられる議論を用いて、ここ1年半ほどの間…

J.S.ミル先生によるネットでの議論のための心構え

blogos.com b.hatena.ne.jp 最近、インターネットがもたらす社会の分断について注目が集まっていますが、なんとなく読み返していたJ.S.ミルの『自由論』に、この問題を考えるヒントというか、分断の時代における議論の心構えとして有用そうな記述がいくつか…

怒りと文明化と市民性

最近投稿した記事に関連する話題がはてなブックマークでも話題になっていました。 p-shirokuma.hatenadiary.com 僕は2年半程前に、 ある問題について、「同じ考え、不満を持ち、それに賛同、共感していたのに、それを改善しようと実際に行動を起こすと冷める…

インターネットは世論の力と継続性を弱めるか

新聞、テレビ等、既存のマスメディアの信頼性が年々下がっているようです。 www.buzzfeed.com 上の記事の池上さんも指摘しているように、すべての個人が参加できるインターネットの発展によって、マスメディアの報道が広く批評の対象となり、またそれを共有…

憎悪と恐怖の世界

この前の金曜日、僕が働く職場の上司(30代)が、業務時間中に、近隣諸国の国民全体ををひどく差別するような発言をしました。 これまでも、その人物はその種の発言(すべてが現在インターネットで流布しているもの)を何度も繰り返してきましたが、今回のそれは…

ある種の寄付の呼びかけに対する違和感

「あの時○○人は私たちにたくさんの寄付をしてくれた。だから今度は私たち××人が、その恩返しをする番だ」 このような言説を、(特定の)諸外国で災害が起きた際に見聞きしたこと、みなさんはあるでしょうか。 この種の寄付の呼びかけには、時に「義務」を迫…

「サプライズ家事」の論理と心理

先日、母から次のような話を聞きました。 ある晩、仕事が長引き、母がいつもより1時間ほど夜遅く家に帰ってくると、すでに帰宅していた父が(どちらもフルタイムの共働きです)、台所にあった水に浸された1.5合のお米(母は帰宅後の早炊きを習慣にしてい…

イニエスタのようにボールを扱うにはどうすればよいか 

少し煽ったようなタイトルになってしまいましたが、今回の記事では僕の5年間ほどの彼のプレーの観察と、実践(草サッカーではありますが…)によって到達した、一定の結論を述べてみたいと思います。 スペイン代表でFCバルセロナ所属のMFアンドレス・イニエス…

「共同体の罪」に対する責任と「歴史修正主義」

小池都知事の最近の言動や、8月に放送されたNHKスペシャルの影響もあってか、過去の歴史と、現在を生きる私たちとの関係、あるいはそれに対して私たちが持つ責任などの議論に再び注目が集まっています。 今回の記事ではこのような議論に関連して、「共同体の…

NHKの日米トップに対する報道の違い(ミサイル発射とハリケーン被害に関して)

このブログでは過去に何回か、(政治に関する)報道における「アクター中心主義」の問題について論じてきました。 human921.hatenablog.com human921.hatenablog.com 報道における「アクター中心主義」とは、僕が勝手に作った造語で、簡潔に言えば、 1 人物…

『ハクソーリッジ』と『小さな抵抗』

※映画のストーリーに関しての記述があります。 先日、映画『ハクソーリッジ』を見てきました。 沖縄戦において敬虔なキリスト教徒としての立場から戦場においても人を殺さず、それどころか武器すら持たずに衛生兵として数多くの兵士の命を救った、実話を基に…

「日本スゴイ」の時代比較

過去の記事では、近年のいわゆる「日本スゴイ」言説を、社会心理学(的な)観点から論じてみました。 それによれば、「日本スゴイ」という言説には、「内集団バイアス」と「黒い羊効果」という一見矛盾するようなロジックが内包されていたのでした。 詳しい…

政治とクリシェ

www.asahi.com 最近、政治におけるクリシェ(常套句)の存在が再び注目を集めています。 「お役所言葉」という言葉もあるように、そもそも政治とクリシェは切っても切れない関係にあるのかもしれません。 しかし、このところ見られるそれは、実のところ単に…

「駆け引き報道」と「抱負報道」

前回の記事では、僕は報道における「アクター中心主義」という概念を提起しました。 「アクター中心主義」とは、「対象の『人物』が現在、何を言ったのか、しているのかについてを中心に報道(ニュース)番組を構成すること」を意味し、換言すれば、「ニュー…

報道における「アクター中心主義」

現在、環境が変わり日常的にテレビのニュースを見ることができる状態にあります。そこで自分が気になったある報道の形態を、ここで備忘録的に書いておきたいと思います。 その報道形態というのが、タイトルにある「アクター中心主義」です。僕はメディア関係…

「日本スゴイ」と「内集団バイアス」

現在様々なメディアで取り上げられることの多いこの「日本スゴイ」という言説。各所で語られてる話題ですが、今回の記事ではこの件を、社会心理学的な観点から考えてみたいと思います。 僕が見るにこれらの言説には、大きく2種類のものがあるように思います…

差別と「社会的距離」

トランプ大統領が誕生したことで、以前にも増して注目が集まっている差別問題、人種問題ですが、今回の記事では、これらの問題と密接に関わる「社会的距離(Social Distance)」について考えてみたいと思います。 「社会的距離」とは、個人や集団間の親近、…

フェイクニュースサイトの2類型

www.buzzfeed.com このbuzzfeedさんの記事を見て、少し前から考えていたことを書こうと思います。それは、フェイクニュース(サイト)の形態についてです。2つあります。 「breitbart」型 まず、buzzfeedさんの記事で取り上げられているようなフェイクニュ…

「本音」の矛先が自分に向かうとき

過去の記事ではトランプさんの当選を出発点に、インターネットと政治と本音の関係について論じました。その最後の部分で、僕は次のようなことを書きました。 ここ日本でも、政治において(インターネット発の)「本音」は力を持ち始めています。 思えば、こ…

「Post-Truth」時代の情報との向き合い方(インターネット版)

オックスフォード大出版局が選出した今年の英単語が「Post-Truth」だったということで、日本でもにわかにこの単語が注目を集めています。 さて、この「Post-Truth」ですが、この言葉の意味する「客観的な事実や真実が重視されず、真実のように感じられること…

「本音」と政治とインターネット

アメリカの次期大統領がトランプさんに決定しました。 今回の結果については、専門家の方々が詳細な分析をするはずで、遠い国の出来事でもあるので僕なんかが特別何か言うことなんて無いんですが、つい最近「インターネットと本音」についての記事を書き、そ…

電車内での化粧と「儀礼的無関心」

最近の記事ではゴフマンを何度か取り上げましたが、先日電車内での化粧についての記事を見かけたので、前々から書いておこうと思っていたこれら電車内でのマナーについて、ゴフマンの「儀礼的無関心」と絡めながら考えてみたいと思います。 anond.hatelabo.j…

公共の場における「萌え絵」と「文明化」

ここ最近再び公共の場におけるいわゆる「萌え絵」の存在についていろんな議論が交わされてますね。 今回は何か個別の問題に対して何か解決策を考えてみるというわけではなく、一つの観点から見た「萌え絵」問題の枠組みを一度俯瞰してみたいと思います。 僕…

「本音」の場としてのインターネット

前回の記事では、インターネットが「表舞台」の「リアル」に対して、「舞台裏」(陰口の領域)的な役割を担っているのではないかと書きました。 そしてインターネットを舞台裏とした場合、表舞台よりも舞台裏のほうが多くの人の目に触れ、露出度が高いという…

Twitterにおけるコミュニケーションについて

先日Twitterで、このようなハッシュタグがトレンドに上っていました。 「#オブラートにブスと伝えよう」 (このタグの文法上のおかしさはとりあえず措いておきます。) このような文言がTwitterというネットサービスの中では大衆性の高い領域で数多く言及さ…

色々な「Make America Great Again」の派生系

アメリカ大統領選の共和党候補ドナルド・トランプ氏の掲げる公式スローガン 「Make America Great Again」は、彼の高いメディア露出もあいまって、非常に有名なフレーズとなりました。(ただ、最初に使用したのはレーガン大統領だそうですが) 今回はそこで…

「好きでいてほしい国」と「嫌いでいてほしい国」

今回は過去の記事で扱ったYouTubeのサジェスト比較について自分なりの考察を加えてみたいと思います。 考察対象として、当記事では過去記事で挙げたサジェストの中でも「日中韓露」に的を絞ってみたいと思います。 というわけで過去記事から一部を貼り付けま…

インターネット・ミームと「想像の共同体」

インターネットでは数多くのミームが生み出されてきました。 その中にはそれが生み出された背景や文脈を深く理解しないと意味が全く分からないものもあり、そのようなミームを多用し、一見何を話しているのか分からない会話を繰り広げ、ひとつの文化圏を作り…

太平洋戦争におけるアメリカの日本人像と現在

今回は少し重いテーマを扱ってみようと思います。 太平洋戦争では日米両方の陣営が相手国民への敵愾心をあおるために、多様なプロパガンダ戦略を展開したことはよく知られています。 アメリカの歴史学者で『敗北を抱きしめて』でも有名なジョン・ダワーは、…

平和なコメント欄の作り方

近年ニュースサイトのコメント欄は世界的に廃止傾向にあります。 wired.jp 「ウェブ人口の増加により節度を保つことが難しくなったから」というのがその理由だそうです。 とはいえ、日本では依然として多くのニュースサイトでコメント欄は存続していますし、…